Sunday, July 24, 2011

マリーゴールド (三十二)

 

群青色の鮮やかな耳飾りをして、濃い紫と金の大胆なワンピースの下から艶々した紅茶色の脚をのぞかせて、太陽の中を颯爽と歩くマリー。マリー嬢、二十歳。マリー嬢、二十一歳。足には黄金のつっかけ。大きなクジャクになるのだ。
 ワッサワサ、ワッサワサ、それから、クワクワ、カー。飛び立った。
 これがマリーの十六年後、十七年後の姿だ。だが今は、マリーちゃん、四歳・カハハ。今日はピンクと黄色とオレンジのものすごい色合いのドレスを着て、新品のゴールドの運動靴で飛び跳ねている。智子が最近カラーコーディネートの勉強を始めて、家中を色で埋め尽くしていた。マリーの服も、家の中とのカラーコーディネートなので家の中に居る分には良いのかもしれないが、家の外から出た途端、すぐ絵の具の塊のようになるのだ。特に家の近所をそれで歩くとひと際目立って、犬はまだしも、猫にまで吠えられた。嗚呼、驚いた。
 が、今日はおばあちゃまが一緒なのだ。おばあちゃまが一緒だと、何でもありなの。受け入れてくれるの。
おばあちゃまが一緒だと、マリーはいつもスキップしてしまう。智子の前でスキップしても、やがては「元気ねえ、子供っぽい」みたいな冷たい目で見られる。バジの前でやっても「もっと高く!ジャンプ・ハイアー!」と一方的に早口で言われるだけだ。だが、おばあちゃまは一緒にいつまでも「ぴょんこ・ぴょんこ、ぴょんこ・ぴょんこ」と音頭を取ってくれて、満面の笑みで見守ってくれる。おばあちゃまは居場所を作ってくれる。

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