Sunday, July 24, 2011

マリーゴールド (五十完)

その直後また智子が、
「大丈夫?」
 と聞くと案外すぐにドアが開いて、トイレの流れる音もして、マリーが出てきてそのまま智子に目もくれずに隣の洗面所に行って歯を磨き始めた。智子が大股で追いかけて行って、
「大丈夫なのね」
 と念を押すと、鏡越しにマリーが「ぷむ」と小さく頷いた。
暫く歯を磨いて、口を濯ぎ終えたマリーが、
「おばあちゃんがさっき、お風呂でね、」
 と話し始めたころには、もう智子はそこに居なかった。マリーは諦めてお口を拭いて、ちゃんと一人でお寝巻きに着替えてベッドに入った。
その夜遅く、金星が出て、山側から海へと一気に風が吹いた。マリーはチベット曼陀羅のタオルケットにしっかりと包まって、カレーとナンの夢を朝まで見続けた。
まだ寝ていても、構わないんだから。

(完)

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