バジがトイレから出てきたら、智子はベッドの中で布団を鼻まで被って寝てしまっていた。
「ちょっと!智子!」
「ちょっと!智子!起きて!」
バジが二度呼び掛ける。時計では午前五時半を過ぎています。
智子は薄ら目を開いて鼻で息をしてから、
「目が回った」
と言ってから、一秒空けて、
「待って、六時一〇分まで寝ることにしたの。時計合わせ直したんだから」
と呟いた。バジは念のため、
「間に合うなりカ?」
とひょうきんに聞いてあげたが、答えはなかった。
バジは仕方なく肩を落として、
「やめといた方がいい、思う」
との独り言と共に、そのまま智子の隣に潜り込んだ。温かい。
いやあ、疲れた。『マリーと夜更かし』になってしまった。それか『マリーと夜の仲間たち』だろうか。いや、違う。『マリーと夜なべ』、でしょう。知らない、知らない。さようならっプ、おやすみなさい。
智子もバジも散々鼾を掻いたと思ったら、午前も酣。早朝のスズメもカラスも、もうとっくに出張やらアポに出掛けてしまって、代わりに電線の上に、太った鳩の群れがぽっぽ・ぽぽっぽ鳴いております。
何時?十一時六四分、否、失礼、十一時四六分。
「十一時四十六分?ヤダー・ヤダー・ヤジャー!!」
と、智子が床を蹴っている。バジが薄ら目を開くと、智子が仁王立ちになって台所から取ってきた超巨大電子時計を掲げてこちらに見せていた。時間は一一時四八分三〇秒三厘、はい四、五、六厘、やったね。やってしまいましたね、遅刻。キツイわ・大胆な寝坊・万歳!
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