Saturday, July 23, 2011

マリーゴールド (十一)

バジはその頃まだ町田市の外れかどこかに住んでいて、植木屋の手伝いをしていた。重労働で、垣根を一列根こそぎ掘り起こしたり、土嚢を一気に走りながら百個も二百個も運ぶ仕事だったから、強靭な体を保持しなければと思って、週一回、八王子の山奥までジョギングに来ていた。行き帰りは自転車で、四、五時間ぐらいはみっちりジョギングをする。
 初め水の音が聞こえたときは、丁度路肩に立って休んでいて、テッキリ石ころか何かがドブに落ちたのだと思った。何事もなかったかのように、園児の列は続いて行く。でも何となく、本当に何となく、その列に割り込んで、ドブ側へ渡った。ドブのどこか分からず、探し回っている内に、園児たちもいつの間にか消えて居なくなって、全く声も歓声も聞こえなくなった。初夏の柔らかな風に、蜂が飛び始めた。
 ふとドブの蓋が始まる辺りを見ると、黄色のズボンの端と真ッ白な素足が目に飛び込んできた。やはり、園児だろうか?迷わず運動靴のままドブに飛び込んだ。でも水が思ったより少ない。水溜り程度の深さだ。
もう一度見ると、ドブの中に見える足が少しばかり大き過ぎる。これは間違いなく、死体だと思ったら頭が凍った。どうして。何故、今ここで私が?私のビザは?

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