Sunday, July 24, 2011

マリーゴールド (三十四)

マリーとおばあちゃまは手を繋いで、慌ただしく火花の降り注ぐロケット公園中央を颯爽と歩いて行った。
 急にマリーが、
「お腹すいた」
 と言うと、おばあちゃまは、
「ようし、自らの欲望に正直なのはよろしい」
 と、口の両脇に八の字を作って是認した。
「何とかしなきゃね」
二人はそのまま歩いて、公園直営のオープン・キャフェで茶色い三角コーンに入ったコンドル・パフェを買って、歩きながら食べた。
 コンドル・パフェとは、バニラのソフトクリームに沢山コーンフレークスを貼り付けて、その上に更にカラメルとチョコソースとイチゴソースを交互に絡め付けてコンドルの顔を模ったデザートの傑作だ。嘴は美味しい、硬いナッツでできていた。見かけはものすごく怖かったが、一度食べてしまうと次また頼まない訳にはいかない代物で、ロケット公園でしか売っていない。
 二人はコンドルの頭頂・嘴を舐め舐め、舌で突ッついたり撫でたりしながら、ゆっくりと公園北側の東屋の方へ歩いて行った。さっきまで晴れていた空にはまた厚い雲が垂れ込んで、りんごビール色の太陽の光が鈍く甘く降り注いだ。東屋には誰も居なくて、多角形の骨組みと丸みがかった屋根が、白く不明瞭に浮かび上がった。
 木の小段を四、五段登るともう東屋の中だった。吹き曝しではあるのに、東屋内部は少しばかり外気より気温が低くて、キノコ汁に似た香ばしい匂いが充満していた。

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