Sunday, July 24, 2011

マリーゴールド (三十三)

おばあちゃまが遊びに来ているから、連日夜はご馳走で、マリーのお腹はゴボゴボ吹きこぼれそうになっていた。土曜日の今日は、お昼の七色おそうめんを食べ終えて、マリーとおばあちゃまはロケット公園までお散歩に出掛けた。空では六月の雲が少しずつ晴れて、水っぽい太陽が小鳥や虫と一緒に飛び回った。
 ヒュルヒュル、ビュルビュル、ミュルミュル。周りでは微風の中、赤い頭やら青い頭をしたロケットがどんどん飛び立って行く。小さいものは親指ほどの大きさから、ちょっとした一軒家ぐらいのものまで、それぞれ空に向かって放たれる。炎は青や赤や黄色にボウボウ怒って、空はお祭りのようでも、戦争のようでもある。
危なくないのか?それは、危ない。でも、マリーとおばあちゃまは、敢えてその危険を冒す女たちなのだ。ただ、そのことをマリーもおばあちゃまも億尾にも出さなかった。
ロケットたちもロケットたちで、機械や金属の独特な強さで、高く遠くへ飛んで行った。どこに落ちるかも分からないのに、飛んで行くのだ。
 無謀か、勇敢か。どちらかと言えば、それは、無謀だろう。地上にどうせ戻って来て落ちるのだから、それでも飛び立つなんて無謀だ。でも、飛び立つ前の地上と、落ちて来た後の地上は、同じ地上でも異なる地上ではないか。例え全く同じ地点に舞い戻ったとしても、離脱・着地という極めて危険なプロセスを踏んで来ている訳だから、もう同じロケットではないし、地上自体も、もはや今まで通りの場所ではなくなっているのだ。それも、空中分解などせず、無事帰還できた場合に限られるのだが。

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