食事の後、後片付けも終わって、おばあちゃまはもう寝ますとか何とか話していたとき、マリーが急にお腹が痛いと言いだして、トイレに引きこもってしまった。戸のすぐ外では智子が、
「大丈夫、大丈夫?」
との声を掛けるのだが、中からは弱弱しい訳の分からない答えしか返って来ない。そこへおばあちゃまが、お饅頭を二、三個お盆に載せて通りかかった。
「マリーちゃん、大丈夫かしら」
とおばあちゃまが言うと、智子は、
「ママが紅茶なんか飲ますからよ」
と喰ってかかる。でもおばあちゃまは悠々と構えて、
「そうかしら。それとも、今日見聞きしてしまったものかしら」
と答えた。智子はまた慌ててしまって、
「今日見聞きしてしまったものって、何、そんな」
と激していたが、おばあちゃまはそれに対して、
「見聞きしたことというより、考えたり感じたりしたことかしら」
とだけ注釈を加えて、
「では、くれぐれもマリーちゃんお大事にね。どうもご馳走さまでした」
と丁寧言ってするりと通り抜けて、向こうへ行ってしまった。
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