Saturday, July 23, 2011

マリーゴールド (十三)

「洗濯機自体はどうなったのかしら。やっぱり、大破?」
 むつ美は舌で自分の唇を舐めながら訊いた。K子はペースを崩されて少しの間表情が固まったが、また話し始めた。
「うん、洗濯機については、あまり何も聞いてない。うーん大破じゃないのかしらねえ。中のドラムが砕けてはみ出て、蓋は真ッ二つとか?だってコンクリートが割れて陥没したのよ。でも洗濯機自体のことはこの話の中ではどうでもよいのかもしれない。
 ごめんね。
一応、公道が破損されたってことで、三日後ぐらいに区役所の人が来たらしいの。弁償。まあ、当然よね。バジさんも智子も、お父さんのせいにしても仕方ないし、制止できなかった責任もあるんだろうけど、何か不服でね。でも全額負担したそうよ。とは言っても、忽ち洗濯はできない、できるけど全部手洗いでしょ、だからもう大変よ。
 しかもね、近所の人で一部始終を目撃した人がいて。いつの間にか智子のお父さんがマイケル・ジャクソン呼ばわりされて、なぜかバジさんまでがマイケル・ジャクソンになっていて、すれ違うたびに吹き出されたり指差されたり、総合的な精神的ダメージは計り知れないわ。ユーモアとして笑い飛ばそうとしても無理だったそうよ。可愛そうに、マイケル・ジャクソンも相当偉大な芸術家だから、喜べばよかったのに」
 むつ美は相槌を打つしかなくて、
「へえ」
 と、思っていたよりも大きな溜息にして言ってしまった。

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